スペシャルインタビュー


スペシャルインタビュー
薬剤師の就職状況はどのように変化するか
資格の活用法
6年制国家試験はどう変わるのか
学校薬剤師の活動
2025年の日本を支える薬剤師に送る

資格の活用法


【プロフィール】
金子 智朗 先生
公認会計士、
税理士。
ブライトワイズコンサルティング合同会社
代表社員。
東京大学工学部
卒業、
東京大学大学院修士課程修了。
日本航空株式会社、プライスウォーターハウスクーパースコンサルタント等を経て独立。
名古屋商科大学大学院教授、日経ビジネススクール講師。

【プロフィール】
児島惠美子
Medisere 社長

       


児島 :こんにちは。今回は名古屋商科大学大学院でAccounting(会計)をご教授いただいております金子先生にメディセレスクールへ来ていただきました。 先生はある雑誌で人気教官の1人として名前が上がったカリスマ教授です。さて、今回、このように対談させていただくことになった経緯は、薬学出身である私 が経営学の大学院へ行くという異分野の融合をやっております。金子先生も工学部出身でありながら、公認会計士という全くの異分野を融合されながら活躍な さっておられます。この「異分野の融合」という二人の共通点から、盛り上がり、対談の話が持ち上がりました。
さて、先生は何故「公認会計士」という資格を取ろうと思われたのですか?


金子 : 私は公認会計士になりたかったのではなく、経営コンサルタントになりたかったんですよ。大学卒業後は日本航空に入社し、そこで6年近くSE(システムエン ジニア)をやっていました。しかし、サラリーマン社会の不条理をたくさん経験し、その不条理を何とか変えたいという思いからコンサルタントになりたいと 思ったんです。そのために必要なスキルを考えたとき、自分はITの仕事はやってきたから、これに数字の専門性が加わればイケるんじゃないかと思ったわけです。


児島 : 公認会計士って、私の友人にもいますが、めちゃくちゃ難しい試験ですよね?


金子 : 確かにそうですね。私が合格した頃は合格率は6%ほどですね。しかも、私の場合は働きながらだったのでなおさら大変でしたね。


児島 :6%ですか!?よくそんな超難関試験に働きながら合格されましたよね!

 

金子 : 努力は陰でするものだと思って入るので、それを人に話すのは本当は私の美学に反するんですが(笑)、実際のところ死ぬほど勉強しましたね。行き帰りの電車の中ではもちろん、昼休みもさっと食事を取って、後はトイレにこもって勉強していました。食事、入浴、睡眠以外の時間はすべて勉強に充てている感じでしたね。


児島 : そこまで先生が頑張れた原動力はなんでしょう?


金子 : 明確にやりたいことがあったからでしょうね。


児島 : 明確にやりたいこと…、それはなんですか?


金子 : 経営コンサルタントになりたかったということです。さらにその先には、独立したいという強い思いもありました。勉強を始める時点でそこまで具体的に思い描いていましたね。


児島 : なるほど。


金子 : よく資格を取ることが自体が目的になっている人がいますが、私は資格を取ることが目的ではなく、その資格を使うことが目的でした。先ほども申し上げたとお り、私は経営コンサルタントになりたいというのがそもそもの思いだったわけですが、具体的にどうすればいいのかよく分らない。そこで、まずコンサルティン グという業界を調べたんですね。世界的な大手コンサルティング会社の歴史をたどってみたら、最初は会計事務所だったものが、ITの領域に業務を拡張するこ とによって世界的なコンサルティング会社に成長していったことを知ったんです。自分にはITのスキルは既にあるので、順番は逆になるけれども、会計のスキ ルを付ければいいんじゃないかと思ったんですね。さらに、独立という夢の実現のためにも公認会計士がいいと考えました。経営コンサルタントになるには、む しろMBA(Master of Business Administration:経営学修士)の方が普通です。でも、この日本という国で独立するためには「看板」が必要なんですよね。グローバルで見た ら、MBAの方が間違いなくウケはいいはずですが、「MBA」ではアポも取れないし、お金も借りられない。そもそも名刺にも「MBAホルダー」なんて入れ ないでしょ(笑)。これが公認会計士だと、名刺には当然書くし、アポも取れる。お金なんて、「この銀行、私の収入本当に分ってるのかな?」と思うくらい貸 してくれますよ(笑)。そういう意味では、「経営コンサルタント、そして独立」という夢の実現のために、私はかなり戦略的に自分のスキルセットを考えまし たし、その中で公認会計士という資格をあくまで手段として考えたんですね。


児島 :それで頑張れたと・・・。


金子 : そうです。公認会計士という資格が欲しくてなった人のほとんどは監査という仕事をしますが、監査は華やかな仕事ではありません。それで、若い公認会計士の 多くは「こんなはずじゃなかった」ということをよく言いますが、私に言わせれば当然です。「公認会計士になった後、何をしたいのか」という人生にとって最 も重要なことを真剣に考えずに、公認会計士という資格を取ること自体が目的になってしまっていたんでしょうから。私はそもそも監査の世界でずっと生きてい くつもりはなかったですし、監査という仕事をその後につながるステップの一つと思っていましたので、全然苦になりませんでした。


児島 :なるほど。メディセレには「薬剤師」という資格を取ろうと学生が集まってきてくれるのですが、私は「国家試験に合格することが目的ではなく、社会で活躍で きる薬剤師になることが目的である」とよく言います。また、社会で活躍している薬剤師の話をして、学生にモデリングさせたり、私から社会で薬剤師としてど んな活躍の仕方があるのかという薬剤師のプロモーションもしています。それで学生のモチベーションが上がれば良いなと思っているのですが…。


金子 : それは有効な方法ですよ。モチベーションも上がるでしょうね。もともと私は薬剤師という職業の重要性はもっと認知されてしかるべきだと思ってるんですよ。 少なくとも私は、薬のことに関しては医師よりも薬剤師の方がはるかに信頼しています。そう意味では、薬剤師の認知度を上げるためのマーケティングというか プロモーションのようなことをもっとやるべきなんでしょうね。さすが児島さん!まさにMBAで学んだ成果を使っていますね。


児島 :まだ、なんちゃってMBAなんですけれど。(苦笑)
薬剤師の仕事って、世間の人は知らない人が多いのです。私は薬剤師の世界を活性化するためにも、社会で薬剤師の認知度を上げようとプロモーション活動をしています。当然ですが、これからもやっていきます。


金子 : 必要なことですよね。ぜひ頑張って欲しいと思います。
「なんちゃってMBA」なんて謙遜していますけど、やはり十分役に立っているんじゃないですか?そもそも、薬剤師でありながらMBAを目指すというのは本 当にすばらしいことですよね。「何で薬剤師がMBAなの?」って思う人もいるでしょうけど、児島さんは今、MBA取得というとてもいい経験をしていますよね。


児島 :「人生に無駄な経験はない」ですよね?


金子 : おっしゃる通り!私も、工学部で大学院まで行って、ITの仕事をしていたのに、そこから全く畑違いの公認会計士になって。大学卒業と同時に公認会計士にな る人がほとんどであることを考えれば、私は人生いろいろと回り道して今に至っています。父親に言わせると、「お前のやっていることはさっぱり分からん」だ そうですし、未だに「何で工学部を出たのに公認会計士なんだ」と言っています(笑)。
でも、いろいろな道を通ってきたから、普通のITエンジニアにも、普通の公認会計士にもできない仕事ができているし、人から「面白い人」って興味も持って もらえると思うんですね。だから、今は「めずらしいですね」とか「変わっていますね」と言われるのは褒め言葉だと思っています。
ついでに言えば、私は全く順風満帆な人生ではなく、だいたい全て1回ずつ失敗しています。大学も1回落ち、公認会計士も1回落ち、ついでに言えば自動車教 習所でも仮免で1回落ち、卒験でも1回落ち。本当に「ボギー人生」なんですよね。1回で何とか上手く行っているのは結婚ぐらいですかね。今のところはね (笑)。
でも、卒験で隣の教官にブレーキを踏まれた交差点のシーンは今でも鮮明に覚えていて、交差点ではいつも注意しています。だから、人生に無駄な経験は一つもないのです。たとえどんなに辛い経験だとしても、すべての経験はしないよりした方がいいと思っています。


児島 :先生、ところで、経営コンサルタントって一言で言えばどんなお仕事なんですか?


金子 : いろんな言い方があると思いますけど、私は、会社のみんなにいかに意味のある行動をしてもらうかを考え、示し、そして行動してもらう仕事だと思いますね。


児島 :ふぅ~ん。


金子 : あ、わかってないでしょ。児島さん、わかりやすいですよね。(笑)
会社の状況を定量的に分析をして診断をすることが、医療で言うと処方せんを書くまで。
でも数字を使って定量的に分析をして、これでもかってロジックを振りかざして正論を言ってみたところで、会社が行動してくれなかったら何にもならないです よね。つまり、正しい処方箋に従って出した薬を実際に飲んでもらう。この飲んでもらうことが難しいわけですよ。「良薬口に苦し」と同じで、正論であればあ るほど、会社の改革は痛みを伴いますしね。
最後に飲んでもらうために必要なのは、定性的な面であり「人間力」なんですよね。頭の良さだけで勝負しているコンサルタントは、ロジカルな定量的分析で終 わる人も少なくありません。しかし、実際に行動を取ってもらうところまで考えないと、本当のコンサルタントじゃないと思ってるんですよ、私は。


児島 :今日、先生の授業で習ったばっかりの所じゃないですか!
もしかして、今、先生は私を試験していらっしゃいます?
「定量的」とは、企業の業績など数値から企業の特性を読み取ること、「定性的」とは歴史や習慣、心理的な質的なことから読み取ること、ですよね。なるほ ど、MBA取得を目指すと「定量」に走りがちですが、「定性的」な分析も必要ですね。そして最後はやはり「人間力」ですか。
「人間力」を養うためにはどうすればよいのでしょうか?


金子 : 「遊ぶこと」を大切にするってことですかね。


児島 :「遊ぶこと」ですか?


金子 : だって、みんな遊ぶの好きでしょ?好きなことなんだから頭ではなく心で会話することができますし、人間の幅も広げるしね。遊びは重要ですよ。私の親しい仲間内では、「仕事を理由に遊びの予定をキャンセルすることは最もカッコ悪いことである」という不文律があるくらいです。


児島 :遊びから学ぶ・・・ですね。先生は合気道、テニス、ゴルフとスポーツ万能ですものね。


金子 : 税理士会では野球の主力選手でもあります。そう意味ではすごい人間力ですよね(笑)。でも間違わないで欲しいのは、遊ぶこと「も」必要だということです。常に人より勉強する、し続けることはプロフェッショナルにとっては当然の前提です。
勉強だけでは道は開けない。でも、勉強しないと道は開けない。「納得のできる人生」、「人よりちょっと違う人生」を生きるためには、人よりちょっとは努力しないとね。
さらに重要なのは、その努力の方向を間違えないこと。試験勉強でもこれは重要で、試験の結果を左右する最重要ファクターじゃないかと思うくらいです。とき どき、ものすごい勉強しているのに、何年も試験に落ちちゃう人いるじゃないですか。あれはほとんどが努力の方向を間違えていると思うんですよね。
努力は大切ですけど、人生に努力賞はないですから。意味のある努力をしなければなりません。そして、努力したことをこんなところでペラペラ喋っちゃいけません(笑)。
ただ、勉強は必要条件だけれども十分条件じゃありません。最後にものをいうのは「人間力」です。


児島 :なるほど。では、先生、最後に薬学生、薬剤師の人たちに一言お願いします。


金子 : 税「プロフェッショナル」として、一生勉強しましょう。それがプロフェッショナルとしての最低限の責務です。その上で「よく学びよく遊べ」ですね。


児島 :先生、ありがとうございました。


資料提供:薬剤師国家試験 予備校 Medisere(メディセレ)